りょーちゃんへ

まりこ(30代前半・女性)
2020年7月に長男を出産。
想いをつむいだ日: 2022/10/11

りょーちゃんへ

お兄ちゃんになって、3か月が経ったね。毎日、そうたを「ぎゅ~」と抱きしめたり撫でたり。初めのうちは、ママやパパが喜ぶから弟をかわいがっている様子もあったけれど、最近はわたしたちがいない寝室からも「そーた、よしよし」と聞こえてきます。保育園に迎えに行くと、抱っこ紐の中を覗き込んで「そーた、おきてる!」 と嬉しそうにするね。甘えたいときには「パパ、そうた、がっこ」と言って、わたしの両手が空いてから抱きついてくるの。すごくやさしいお兄ちゃんです。 

そうたの出産前に入院した1か月間、いちばんつらかったのは、りょーちゃんに会えないことでした。ほんとうに淋しかった。スマホの写真フォルダで2020年7月まで遡って、りょーちゃんの生まれた日から順に見返していたよ。よだれでスタイをべちゃべちゃに濡らしながらハイハイする姿。初めて食べた苺の甘酸っぱさに驚くくしゃくしゃの顔。大切な思い出がぎゅっとつまっている写真ばかりで、大きく成長したなあという感動と、りょーちゃんに会いたい気持ちが溢れて、涙が出ました。

会えないあいだ、りょーちゃんは図鑑をたくさん読んで、恐竜ブームが到来したね。それから数か月で、50種類以上の恐竜の名前と特徴を覚えました。今や小さな図鑑では物足りないようで、大きくて重い図鑑を絵本棚から引っ張り出しては、楽しそうにページをめくりながら恐竜の名前を叫んでいます。

りょーちゃんの喜ぶ顔が見たくて、このあいだ、日本の恐竜王国・福井県に行きました。ディノパークや恐竜博物館で、大はしゃぎだったね。写真を見たおばあちゃんは「忘れちゃうのかなあ」と呟いていたけれど、帰ってからも「アンキロ(アンキロサウルス)みた! パパ、ママ、りょーちゃん、いっしょみた!」と話す姿を見ると、楽しかった記憶や恐竜を好きな気持ちは、きっと忘れないんだろうなって思います。

りょーちゃんは、2歳になった頃から急に語彙が増えました。ずっと自分の名前が言えなくて、ラ行は難しいかなと思っていたのだけど、ある日「ママこむ(これ読む)、こっちりょーちゃん」と絵本を渡したからびっくりしたよ。今は、恐竜のおやこなどのイラストを見ると、大きい順に指を差しながら「パパ、ママ、りょーちゃん、そーた」と言います(そうたもすっかり家族の一員!)。

自分の意思もはっきり伝えるようになってきました。「いや」って泣かなくて済むようにと思って、やりたいことを伝える言葉を教えたら、次からは教えた通りに「りょーちゃん、やりゅ」「とって?」「もうちょっと、ちょうだい?♡」などと言うので、ママもパパも断るのが難しくなりました(笑) 

りょーちゃんは何でもわかっているなって思う。やさしくて、素直で、まわりの人の表情もよく見ている。大好きなぶどうも、自分だけもらっていることがわかると「ママも、どーじょ」と言ってひとつくれて「おいしーね!」とにっこり笑う。

みんなが笑顔で遊んでいるとりょーちゃんも楽しそうにするし、叱ったことは守る(半泣きだけど)。わたしが一度玄関のスロープで腰を痛めて動けなくなったのも覚えていて、スロープを上るたび、ベビーカーの上から「ママ、じょーぶ?」と振り返るよね。不安にさせてごめん (笑)

泣いていると駆け寄ってきて、ぎゅーっと言いながら抱きしめてくれます。小さな手なのに、りょーちゃんに抱きしめられるとあたたかいもので包まれているような感覚になって、ほっとするの。

こうして手紙を書いていると、ありがとうって気持ちでいっぱいになるよ。りょーちゃんが生まれたから〈つむぎや〉は生まれた。やりたいことが次々出てきて、未来がすごく楽しみになった。大袈裟に聞こえるかもしれないけれど、ほんとに。わたしは、りょーちゃんたちがいれば、何でもできる。何倍も強く、やさしくなれる。

りょーちゃんと一緒に時間を過ごして、日常の中にキラキラしたものがたくさん溢れているんだって気づきました。ちぎったパンはお皿の上を泳ぎ始めるし、道路の掠れた白線は「ビリビリ」破れたように見える。一人ではムダだと感じる踏切待ちも、りょーちゃんと一緒なら、電車の色をあてっこする楽しい時間に変わるんだ。

だからね 、ほんとうにありがとう。これから先もずっと、キラキラした笑顔も、思うようにいかなくて泣きじゃくる顔も、見守っていきたいなって思います。

「ママっき!」って、いつも言ってくれてありがとう。
ママも、りょーちゃんっき! 

2022年10月 ママより

この文章は、つむぎや一周年記念「特別コラボプラン」のための書き下ろしです。